子どもの権利が守られていない例|教室でできる守り方を徹底解説
更新日:8月25日
子どもの権利は条約や法律で保障されているものの、日常の中で守られていない場面は、世界にも日本にも残っています。何をもって「守られていない状態」と言えるのか、判断に迷う教育関係者や保護者は少なくありません。
手がかりになるのが、子どもの権利条約が定める4つの原則です。この原則を基準にすると、世界の児童労働から日本の虐待やいじめ、意見が尊重されにくい教室まで、課題の輪郭が具体的に見えてきます。
目次
1. 子どもの権利とは?条約が定める基本の考え方
子どもの権利は、条約という国際的な約束で保障されています。まず基本の考え方を押さえておくと、「守られていない例」を見分ける基準がはっきりします。
1.1 子どもの権利条約が生まれた背景と日本の批准
子どもの権利条約は、1989年に国連総会で採択された国際条約です。18歳未満のすべての子どもを、保護される対象としてだけでなく、権利を持つ一人の人間として位置づけた点に大きな意味があります。日本は1994年に158番目の批准国として加わりました。
採択の背景には、戦争や貧困で多くの子どもが命や教育の機会を奪われてきた歴史があります。だからこそ、国境を越えた共通のルールが必要とされたのです。
批准は、条約の内容を自国で実現する責任を負うことを意味します。日本もこの30年あまり、国内の制度を条約に近づける努力を続けてきました。
とはいえ、批准したことと実際に守られていることは同じではありません。条約を掲げるだけでなく、日常の場面でどう生かすかが問われ続けています。子ども自身が自分の権利を知ることも、これからの課題として残されています。
1.2 子どもの権利が「守られていない」とはどういう状態か
「守られていない」とは、条約が保障する権利が、生活や学びの場で実際には実現していない状態を指します。暴力や搾取にさらされる深刻なケースだけを指すのではありません。
たとえば、意見を聞いてもらえない、安心して学べない、必要な医療や食事が届かないといった状況も含まれます。見えにくいところに課題が潜むという難しさがあります。
権利が欠けた状態は、子どもの育ちや学びに長期的な影響を及ぼしかねません。だからこそ、後述する4つの原則を物差しに、日常の場面を点検する視点が求められます。
見えにくい課題ほど、意識して探さなければ気づけません。日々の関わりの中で「この子の権利は満たされているか」と問い直す習慣が、早い気づきにつながります。
2. 子どもの権利条約の4つの原則を理解する
子どもの権利条約には、すべての権利を貫く4つの原則があります。この原則を知ると、守られているかどうかを判断する軸が持てます。
2.1 子どもの権利を支える4つの原則の内容
日本ユニセフ協会は、条約の基本的な考え方を次の4つの原則として整理しています。
差別の禁止
子どもの最善の利益
生命、生存および発達への権利
子どもの意見の尊重
差別の禁止は、国籍や性別、障がいなどを理由に扱いを変えないことです。最善の利益は、子どもに関わる決定で「その子にとって最もよいこと」を優先する考え方を指します。生命・生存・発達は命を守られ能力を伸ばして育つ権利、意見の尊重は自分に関わる事柄に意見を表せることを意味します。
4つの原則は、こども基本法にも取り入れられています。国内の法律とも共通する基準だと理解しておくとよいでしょう。
2.2 4つの原則から子どもの権利が守られているかを見極める視点
4つの原則は、そのまま日常の点検基準として使えます。ある対応が子どもの権利を守っているかどうか、原則に当てはめて確かめる方法です。
たとえば校則を見直す場面では、「子どもの意見を聞いたか」「その子にとって最善か」と問い直します。家庭でも、進路や習い事を決めるとき、本人の意見表明の機会があるかが目安になります。
判断に迷ったら、4つの原則のどれかが欠けていないかを確認すると、課題の所在が具体的に見えてきます。
原則を暗記する必要はありません。迷ったときに立ち返れる物差しとして手元に置いておくだけでも、対応の質は変わってきます。
3. 世界で子どもの権利が守られていない例
世界に目を向けると、子どもの権利が深刻に侵害されている例が今も残っています。数字の大きさから、問題の広がりが見えてきます。
3.1 児童労働や人身売買に見る守られていない例
ILOとユニセフの2025年の共同報告によると、世界の児童労働者は5歳から17歳で約1億3800万人と推計されています。そのうち健康を害する危険・有害な労働に従事する子どもは、約5400万人にのぼります。
代表的な例として、次のような状況が挙げられます。
危険な農作業や鉱山での児童労働
人身売買による強制労働や性的搾取
武装組織に加わる子ども兵士
これらは、教育を受ける権利と生存の権利を同時に奪います。数の多さは、個別の支援だけでなく制度や国際的な取り組みが欠かせないことを示しています。
こうした児童労働の背景には、家庭の貧困や十分な教育機会の不足があります。子どもを働かせざるを得ない状況そのものを変えなければ、根本的な解決にはつながりません。
3.2 紛争や貧困で子どもの権利が守られていない例
紛争や貧困も、子どもの権利を広く損なう要因です。学校が破壊されたり、家計を支えるために働かざるを得なかったりする状況では、学ぶ権利が実現しません。
医療体制が整わない地域では、防げるはずの病気で命を落とす子どももいます。安全な水や十分な食事が届かないことは、生命・生存・発達の権利に直接関わる問題です。
紛争や貧困は複数の権利を同時に奪うため、教育・医療・生活支援を組み合わせた対応が求められます。
国際機関や現地の団体は、こうした地域で緊急支援と長期的な教育支援を並行して進めています。ただ、支援が届きにくい地域も残されており、課題は解消し切れていません。
遠い国の出来事に見えても、国際的な支援や関心のあり方が状況を左右します。私たちがどれだけ問題を知り続けるかも、子どもの権利を守る力の一つになります。
4. 日本で子どもの権利が守られていない例
子どもの権利が守られていない例は、遠い国の話にとどまりません。日本国内にも、見過ごされやすい課題が残っています。
4.1 虐待やいじめに見る子どもの権利が守られていない例
日本で子どもの権利が脅かされる場面は、身近なところにもあります。
安心して育ち、学ぶ権利が損なわれるケースです。
家庭内での虐待やネグレクト
学校でのいじめ
不登校による学びの機会の減少
深刻な場合の自殺
これらは互いに関係し合うことが多く、単独の問題として切り離せません。背景まで含めて子どもの声を聴くことが、状況を改善する出発点になります。
学校現場に近い立場からも、次のような声が見られます。
これらの背景には、家庭の孤立や経済的な困難が関わっていることも少なくありません。子ども本人の努力だけでは解決しにくく、周囲の大人や社会の支えが欠かせません。
4.2 子どもの意見が尊重されにくい学校や家庭の場面
深刻な事件でなくても、子どもの意見が尊重されにくい場面は日常に潜みます。意見表明の権利が実現しにくい状態です。
たとえば、校則の見直しで当事者である子どもに意見を聞かないまま決めてしまう場面があります。家庭でも、「まだ子どもだから」と本人の希望が後回しになりがちです。
意見を聞かれた経験の少なさは、自分の考えを言葉にする力の育ちにも関わりかねません。小さな場面での積み重ねが問われます。
逆に、意見を受け止めてもらえた経験は、子どもの自信や主体性を育てます。特別な場面でなくても、日常のやり取りの中で意見を聞く姿勢が大切です。
4.3 国連が指摘してきた子どもの権利をめぐる課題
国連子どもの権利委員会は、日本に対して繰り返し改善を求めてきました。
2019年の審査では、次の6項目が緊急に対応すべき課題として挙げられています。
指摘項目 | 主な内容 | 背景にある課題 |
|---|---|---|
差別の禁止 | 出自や性別による不利益 | 初回勧告から継続 |
子どもの意見の尊重 | 政策や個別対応での軽視 | 参加の機会不足 |
体罰 | 家庭や施設での容認 | 意識と制度の遅れ |
家庭環境を奪われた子ども | 代替的養護のあり方 | 施設中心の養育 |
生殖・精神の健康 | 相談や支援の不足 | 情報や体制の不足 |
少年司法 | 制度の見直し | 拘禁への偏り |
差別など一部の課題は初回の勧告から繰り返し指摘されており、改善が途上にあることがうかがえます。国際的な視点からの点検が続いている状況です。
こうした指摘は、日本の取り組みを否定するものではありません。国際基準に照らして課題を可視化し、改善の方向を示す手がかりとして受け止めることが大切です。
5. 教室で子どもの権利を守るためにできること
子どもの権利は、身近な教室から守っていけます。特別な制度がなくても、日々の関わり方で実現できることは少なくありません。
5.1 子どもの権利を尊重した教室のルールづくりの進め方
教室のルールは、子どもと一緒につくることで意見の尊重が実現します。
次の手順で進めると、合意にたどり着きやすくなります。
現状のルールを子どもと一緒に洗い出す
困っていることや変えたい点を出し合う
目的を確かめながら新しい案を話し合う
合意した内容を明文化し、定期的に見直す
大切なのは、決定の過程に子ども自身が加わることです。押しつけられたルールより、話し合って決めたルールのほうが守られやすくなります。
話し合いの過程そのものが、意見を表す練習の場にもなります。ルールを決める経験を重ねるほど、子どもは自分たちで考える力を身につけていきます。
5.2 対話を通じて子どもの意見を引き出す関わり方
子どもの意見を引き出すには、話しやすい聴き方が欠かせません。正解を求めるのではなく、考えの背景まで受け止める姿勢が問われます。
たとえば「どう思う?」と開かれた問いを投げかけ、答えを否定せずに受け止めます。
沈黙を急かさず、少数の声も拾うと、発言が苦手な子も参加しやすくなります。
聴いてもらえた経験が、次に意見を言う意欲につながります。関わり方の積み重ねが、意見表明の権利を支えます。
大人が完璧な聴き手である必要はありません。うまく引き出せない日があっても、聴こうとする姿勢が伝わることが、子どもの安心につながります。
5.3 教員や保護者が子どもの権利を学び直す方法
子どもの権利を守るには、まず大人が学び直すことが近道です。
学びの手段はいくつもあります。
子どもの権利に関する書籍や資料
教育委員会や団体が開く研修
学校内での事例共有や振り返り
一人で抱え込まず、同僚や家庭と学びを共有すると、対応の幅が広がります。教育委員会や団体が開く研修に参加すると、体系的に学べます。
6. 対話力養成セミナーで学ぶ子どもの権利と人権教育(山中信幸)
子どもの権利を教室で実践するには、対話を軸にした学びが助けになります。
山中信幸氏が全国で提供する研修は、その一つの選択肢です。
6.1 対話力養成セミナーで扱う子どもの権利と人権教育のテーマ
学校で子どもの意見をどう引き出すか、悩む先生は少なくありません。
こうした現場に向けて、山中信幸オフィシャルサイトは対話力養成セミナーを全国で提供しています。
扱うテーマは、生徒や保護者とのコミュニケーション、人権教育、多文化共生、アクティブラーニングなど多岐にわたります。講師は開発教育ファシリテーターで社会教育士の山中信幸氏。30年以上の教育現場経験をもとに、教員や社会教育関係者に向けて進められます。
知識を得るだけでなく、教室で実践できる関わり方まで持ち帰れる点が、日々の授業改善につながります。
6.2 教育現場での対話づくりが向いているケース
対話づくりの研修は、どんな場面で役立つのでしょうか。
次のような状況に当てはまる場合、検討する価値があります。
授業で子どもの意見が出にくい
生徒や保護者との関係づくりに悩んでいる
地域や多文化の課題を教育に取り入れたい
人権教育をどう進めるか手がかりがほしい
一つでも心当たりがあれば、対話を学ぶことで糸口が見つかる場合があります。自分の関わり方を見直す機会として活用できます。
6.3 セミナーや研修を検討する際に確認したいこと
研修を選ぶときは、目的と対象が合っているかを先に確かめると安心です。
教員向けか、保護者や社会教育関係者も含むか、進め方は講義形式か対話形式か、といった点を見ておきます。
あわせて、講師の専門や実績を確認しておくと、学びの内容を具体的にイメージできます。対話力養成セミナーを主宰する山中信幸氏は多文化共生・人権教育・国際理解教育を専門とし、2026年には『対話が開く人権教育:子どもの尊厳を守る教室のつくりかた』(解放出版)を刊行しています。
書籍と研修を組み合わせると、理論と実践の両面から学べます。検討の際は目的に立ち返って選ぶとよいでしょう。
7. 子どもの権利が守られていない例に関するよくある質問
子どもの権利が守られていない例について、よく寄せられる疑問をまとめました。要点を整理し直して答えます。
7.1 質問1:子どもの権利が守られていない例にはどんなものがありますか?
世界と日本の両方に例があり、論点は次の3つに整理できます。
世界:児童労働・人身売買・子ども兵士
世界:紛争や貧困による教育・医療の欠如
日本:虐待・いじめ・意見が尊重されない場面
深刻な暴力や搾取だけでなく、意見を聞かれない日常の場面も含まれる点が押さえどころです。身近なところにも課題が潜むと考えると、点検の視野が広がります。
7.2 質問2:日本の子どもの権利は国際的にどのような課題を指摘されていますか?
結論から言えば、複数の分野で継続的な改善を求められています。
国連子どもの権利委員会が2019年に挙げた要点は次のとおりです。
課題 | 指摘の理由 |
|---|---|
差別・体罰 | 容認が残り改善が途上 |
意見の尊重 | 政策・対応での軽視 |
少年司法・代替養護 | 制度の見直しが必要 |
差別などは初回勧告から繰り返されており、国際基準との差が続いていることがうかがえます。国内の取り組みが問われ続けている状況です。
7.3 質問3:教室で子どもの権利を守るには何から始めればよいですか?
最初の一歩は、子どもの声を聴く場をつくることです。
次の順で始めると無理がありません。
子どもに意見を聞く機会を一つ設ける
否定せずに受け止め、話し合う
ルールや対応に子どもの声を反映する
小さな実践からで十分です。聴いてもらえた経験の積み重ねが、権利を尊重する教室づくりにつながります。
8. まとめ:子どもの権利を守る教室づくりを始めよう
子どもの権利が守られていない例は、世界の児童労働から日本の虐待やいじめ、意見が尊重されにくい教室まで幅があります。共通するのは、条約の4つの原則のいずれかが欠けている点です。
守るための一歩は、身近な教室や家庭で子どもの声を聴くことから始まります。ルールを一緒につくり、意見を受け止める関わりを重ねると、子どもの権利は日常の中で実現していきます。
大人が学び直すことも欠かせません。書籍や研修を手がかりに、対話を軸にした人権教育に取り組むことが、子どもの尊厳を守る教室づくりの支えになります。
子どもの権利を守る一歩を、山中信幸の対話力養成セミナーで
山中信幸オフィシャルサイトは、30年以上の教育現場経験をもつ講師が、生徒や保護者との対話や人権教育の学びを全国で支援しています。研修の目的や対象を確かめながら、まずは扱うテーマや進め方を気軽に見てみてください。
子どもの権利を守る教室づくりの手がかりとして、下記のサイトから内容を確かめてみてはいかがでしょうか。
お知らせ
2026年7月10日、山中信幸 著『対話が開く人権教育―子どもの尊厳を守る教室のつくりかた』が刊行されました。
「思いやり」を教えるだけではない、人権を軸にした教育とは何か。著者自身の実践や失敗、省察をもとに、教師の日々の小さな選択から人権教育を見直すための一冊です。教育や子どもとの関わりに携わる方は、ぜひご活用ください。
