教師と保護者の信頼関係づくりに効く3つの工夫とは
- 山中信幸
- 5月30日
- 読了時間: 13分

▶︎1. 教師と保護者の関係とは?

1.1 教師と保護者の「関係性」が注目される理由
今、教師と保護者の関係性が大きく注目されているんです。
ひと昔前は、学校が教育を一手に担い、家庭との関わりは限られていました。
でも今は、家庭と学校が一緒になって子どもの成長を支える時代。そんな中で、教師と保護者の関係が良好かどうかは、とても大きな意味を持つようになっています。
たとえば…
保護者とのやりとりがスムーズな先生は、子どもへの対応にも余裕が生まれる
小さな不安や不満を保護者から受け取れることで、大きなトラブルを未然に防げる
信頼関係があると、学級経営がうまくいきやすくなる
こんなふうに、教師と保護者の関係は、子どもたちにとっての安心や学びにも直結するんです。
もちろん、すべてがうまくいくわけではありません。
でも、関係性を築こうとする姿勢そのものが、信頼への第一歩になりますよ。
1.2 教育効果にも影響する?保護者との関係が持つ意味
実は、教師と保護者の関係が教育効果そのものにも影響することがわかってきています。
最近の研究や実践の中で、家庭と学校の連携がうまくいっているクラスでは、次のような傾向が見られるそうです。
子どもが学校生活を前向きにとらえるようになる
学力や生活習慣の改善が見られる
問題行動の予防につながる
たとえば、保護者が「先生がちゃんと見てくれている」と感じれば、その安心感が子どもにも伝わります。逆に、保護者との信頼関係が薄いと、小さなことで誤解や不信感が生まれてしまうことも…。
だからこそ、教師と保護者の関係づくりは、単なる連絡や保護者対応を超えた「教育の一部」として考えることが大事なんです。
▶︎2. 良好な関係づくりの基本

2.1 信頼関係を築くためのスタート地点
教師と保護者の関係は、出会ったその日から始まります。そして、最初の印象がその後の関係性に強く影響するんです。
特に年度初めは、保護者にとっても「どんな先生なのかな?」という不安が大きい時期。教師としては、子どもの状態を知るために保護者と関係を築いていく必要がありますよね。
でも、忙しい中で一人ひとりに丁寧に対応するのは簡単なことではありません。
だからこそ、信頼関係の土台となる「スタート地点」で意識したいことがあります。
保護者が感じる“安心感”がカギ
人は相手に安心感を持てると、少しずつ心を開けるようになります。
保護者が教師に対して安心できるポイントは、次のようなものです。
子どものことをよく見てくれている
一方的ではなく、話を聞いてくれる
丁寧な言葉づかいや対応が感じられる
特に、「名前を呼んでくれる」「小さな変化にも気づいてくれる」など、日々の中で教師が子どもをよく見ていることが伝わると、保護者はぐっと信頼を寄せてくれるんです。
最初の関わりで伝えたいメッセージ
スタート地点で意識したいのは、次のようなメッセージを伝えることです。
「子どもをしっかり見守っていますよ」
「おうちの方と協力していきたいと思っています」
「どんなことでも、遠慮なく教えてくださいね」
こうした姿勢を最初に見せるだけで、関係の築きやすさがぐっと変わるんです。
2.2 日常のちょっとした声かけが関係を変える
特別な場面よりも、毎日のさりげない一言こそが保護者との関係を育ててくれます。
保護者対応というと、「面談」「電話連絡」「保護者会」のような大きな場面を想像しがちですが、実際に信頼を育むのは日々のやりとりです。
たとえば…
迎えのときに「今日は○○さん、頑張って発表してましたよ」
連絡帳に「昨日より落ち着いた様子でした」
電話の冒頭で「お仕事中すみません、○○さんのことで少しだけ…」
こうしたちょっとしたコミュニケーションが、保護者にとっては「見てもらえている」「信頼して任せられる」という安心感につながります。
子どもを通じてつながる関係
日常の声かけでは、“子ども”という共通の視点を持って話すことが大切です。
教師の立場では、つい伝えたいことが先に立ってしまいがち。でも、子どもの頑張りや変化を真っ先に伝えると、それだけで保護者は「この先生は、うちの子を見てくれている」と感じてくれるんです。
声かけのポイントは以下の通りです。
子どもの「小さな変化」に気づくこと
良い面も課題も、バランスよく伝える
感情的にならず、事実ベースで話す
日常の何気ないひと言の積み重ねこそが、信頼関係を育てていく栄養になるんです。
2.3 伝え方ひとつで変わる保護者とのやりとり
同じ内容を伝えるにも、伝え方によって受け取り方は大きく変わります。
特に、注意やお願いを伝える場面では、保護者との関係性に大きく影響することがあります。
ちょっとした一言が誤解を招いたり、逆に信頼を深めたりするんです。
保護者が敏感になるポイント
保護者は、子どもがどう評価されているかにとても敏感です。だからこそ、指摘する際には次のような配慮が欠かせません。
子ども本人を否定しない
教師の価値観を押しつけない
「一緒に考えたい」という姿勢を見せる
たとえばこんな言い換えが有効です。
内容 | NGな言い方 | 印象を和らげる言い方 |
不注意が多い | 「だらしないです」 | 「気が散りやすい様子があります」 |
落ち着きがない | 「騒がしいです」 | 「活動的でエネルギーがあふれてますね」 |
家庭でも指導を | 「家庭のせいですね」 | 「おうちの様子も少しお聞きできると助かります」 |
大切なのは、事実を柔らかく伝えることと、“一緒に子どもを支えたい”という気持ちを表すこと。
それだけで、保護者の気持ちはグッと和らぎますし、建設的なやりとりができるようになります。
▶︎3. 教師と保護者の関係でよくある悩みと対処法

3.1 苦情やクレームがあったときの対応
保護者からの苦情は、誰にとってもストレスになります。でも、関係悪化の分かれ道は“対応のしかた”にあるんです。
たとえば「先生の言い方がきつい」「宿題が多すぎる」といった言葉が保護者からあったとします。これを単なる文句と受け取るのか、「心配や不安のサイン」として捉えるのかで、その後の展開は大きく変わってきます。
実際、苦情の多くは「先生に相談できる関係性ができていないこと」が背景にあることも多いんです。
対応で心がけたい3つのステップ
まず受け止める
反論や否定をせず、「ご意見ありがとうございます」「ご不安なお気持ち、わかります」と、保護者の気持ちを受け止めることが大切です。感情が落ち着くと、話し合いがしやすくなります。
事実確認を丁寧に
感情に流されず、まずは冷静に事実を整理しましょう。子どもの様子、教室での出来事、同席していた職員の意見などを多角的に確認することで、保護者に誠実な説明ができるようになります。
具体的な対応策と今後の連携を提案する
「今後は〜のように気をつけていきます」「ご家庭でも見守っていただけると助かります」といった“協力関係”を前提とした言葉を添えることで、対立ではなく“共に考える姿勢”が伝わります。
大切なのは、「先生は味方でいたいと思っている」と伝えること。
この一言があるだけで、保護者の見方は大きく変わることがあるんです。
3.2 モンスターペアレントとの向き合い方
理不尽な言動や過剰な要求をしてくる保護者との関係づくりは、非常に難しいと感じる先生も多いですよね。
たとえば…
「うちの子にだけ厳しいんじゃないですか?」
「すぐに謝罪してください」
「毎日様子を詳しく報告してください」
こうした要求は、先生にとって精神的な負担になりますし、クラス運営にも影響を及ぼしかねません。でも、すぐに「対応できません」と突き放してしまうと、事態が悪化してしまうこともあります。
そんなときに大切なのは、“一人で抱え込まない”こと。
【対応のポイント】
項目 | 実践例 | ねらい |
校内で共有 | 管理職・学年主任と一緒に状況を把握 | 個人攻撃を避け、組織として対応する姿勢を取る |
書面や記録を活用 | 発言内容や対応履歴を日誌に残す | 言った・言わないのトラブルを防ぐ |
対面・電話より書面対応に切り替える | 要望に対して書面で返答 | 感情的なやりとりを避け、冷静な話し合いへ |
さらに、あえて「第三者を交える」という方法も効果的です。
スクールカウンセラーや養護教諭、教育委員会の専門員など、中立的な立場の人が入ることで、保護者側も冷静になりやすくなります。
“味方”を増やすことが、心の余裕にもつながるんです。
3.3 忙しくて関係づくりに手が回らないときは?
「本当はもっと関わりたいけど、毎日が手一杯で…」そう感じている先生も多いのではないでしょうか。
教員の仕事は授業だけじゃありません。資料作り、会議、行事の準備、成績処理…やるべきことが山積みの中で、保護者対応に時間と心を割くのは簡単ではないですよね。
それでも、ちょっとした工夫で関係づくりを“効率よく、丁寧に”進めていくことは可能なんです。
限られた時間でできる工夫例
「全員に完璧」ではなく、「一部の保護者と深く」でもいい
関係が近くなると、自然と口コミのように良い評判が広がることもあります。
定型メッセージ+個別の一言
おたよりや連絡帳では、共通部分をテンプレートにしておき、その上で子どもごとの小さな変化やエピソードを加えるだけでも好印象になります。
ICTツールの活用
最近は連絡アプリや学級ブログを使って、保護者とスムーズに情報共有している学校も増えています。「今日はこんな活動をしました」などの写真や一言コメントだけでも、保護者は安心感を得られるんです。
そして何よりも、「100点を目指さない」こと。
関係づくりは長期戦です。余裕がないときこそ、自分自身のケアも忘れずに、無理のない形で続けることが、結果として良い関係に繋がっていきます。
▶︎4. チームで支える「教師と保護者の関係」
4.1 学校全体で取り組む関係構築とは
教師と保護者の関係づくりは、個人戦ではなく“チーム戦”なんです。
特に最近の教育現場では、学級担任だけに任せるスタイルでは限界がきているという声も増えていますよね。保護者の価値観や家庭の状況が多様化する中、ひとりで全てに対応しようとするのは、心も時間も追い詰めてしまいかねません。
そこで注目されているのが、学校全体として“保護者と向き合う文化”をつくることです。
たとえばこんな取り組みがあります。
学年チームで定期的に保護者との対応事例を共有する場をつくる
「どんな言い方をしたら伝わった?」「どこでつまずいた?」などの情報交換は、担任の視点を広げてくれます。
保護者対応に関するガイドラインやマニュアルを作成し、全教職員が共有する
対応の温度差が少なくなり、保護者も安心しやすくなります。
“関係づくりは全職員の仕事”という共通認識を持つ
担任以外の先生や事務職員など、誰と関わっても温かさを感じられる学校って、それだけで信頼度が高まるんです。
個人のスキルだけに頼らない体制づくりが、持続可能な関係構築には欠かせません。
こうした文化が根付いていれば、もし担任の先生にトラブルがあった場合でも、チームで支え合うことができるんです。
4.2 管理職や養護教諭との連携
管理職や養護教諭は“縁の下の力持ち”として、教師と保護者の間に立ってくれる存在です。
たとえば、保護者から「担任には直接言いにくい…」という話があったとき。養護教諭がクッション役になってくれることで、担任が必要以上に感情的な対応に巻き込まれるのを防げることもあるんです。
また、管理職は保護者からの“学校に対する期待や不満”をダイレクトに受け止めるポジションでもあります。
こんな連携が効果的です。
担任が保護者対応に悩んだとき、管理職が同席して話す
第三者がいることで、保護者側の感情が落ち着きやすくなるんです。
養護教諭が保護者との信頼関係を持っている場合、そのつながりを生かして対応を円滑にする
たとえば、「今日は少し情緒が不安定だったので、おうちの様子が気になって…」といった気づきを保護者に自然に届けてもらえることも。
情報を一点集中せず、校内で“見える化”しておく
教務主任・特別支援コーディネーターなど、複数の立場で保護者の話に触れることで、偏った対応や誤解を防げます。
担任が孤立しない関係づくりが、学校全体の安心感にもつながっていくんです。
連携のポイントは、
「普段から顔を合わせ、自然と相談できる関係性をつくっておくこと」。
いざというときに、頼れる存在がそばにいることは、本当に心強いです。
4.3 外部研修やサポートを活用するという選択肢
「もうこれ以上、自分だけじゃどうにもならない…」そんなとき、外部の力を借りることは決して悪いことではありません。
むしろ、最近の学校では外部研修やファシリテーターを活用することが“当たり前の選択肢”になりつつあります。
外部の専門家は、現場の視点とは少し違った角度から関係構築のヒントを与えてくれる存在です。特にコミュニケーションや対話の技法、感情へのアプローチなどは、日々の教育実践だけではなかなか身につけにくい領域なんです。
たとえばこんな研修があります。
研修テーマ | 内容の例 | 期待できる効果 |
保護者対応の心理的アプローチ | 傾聴・共感・伝え返しの技法 | 感情的な場面でも冷静に対応できるようになる |
クレーム対応トレーニング | ケーススタディを使ったロールプレイ | トラブルへの初期対応が的確にできるようになる |
教師自身のメンタルケア講座 | ストレスマネジメントやセルフコントロール | 保護者対応による疲弊を防ぐことができる |
また、外部サポートを通じて保護者向けの学習会を行うことも、信頼関係を深めるいい機会になります。
「学校と家庭の役割分担って?」
「子どもの困りごとにどう関わる?」
こうしたテーマで保護者と“同じテーブルで学ぶ場”をつくると、関係がぐっと近づくんです。
外部との連携は、関係づくりの幅をぐんと広げてくれる大切なツール。
学校内に閉じこもらず、外に目を向けることで、新しい風が入ってくるんです。
▶︎5. 教師と保護者の関係を見直すと学校が変わる
5.1 関係改善がもたらすポジティブな変化
教師と保護者の関係が良くなると、学校全体の雰囲気まで変わってくるんです。
信頼関係が築かれている学校では、先生たちが自信を持って保護者と関わり、保護者も安心して学校に協力してくれるようになります。すると、自然と子どもたちの様子にも良い影響が表れるんです。
たとえば…
教室での子どもたちの表情が柔らかくなる
問題行動が減り、落ち着いた学級運営がしやすくなる
保護者から前向きな意見や協力が得られやすくなる
さらに、先生同士でも「保護者対応がうまくいった」という経験を共有し合うことで、お互いのモチベーションアップにもつながります。
つまり、関係性の改善は単なる個人対応の話ではなく、「学校全体の風土づくり」にもつながるんです。
5.2 今できる一歩から始めてみよう
大きな変化を目指す前に、まずは小さな一歩からで大丈夫です。
保護者との関係づくりって、何か特別なスキルが必要なものではなくて、「子どもを真ん中にして、同じ方向を向く姿勢」があれば、自然と形になっていくんです。
今日からできることの例をいくつかご紹介しますね。
一人の保護者に、子どもの良いところをひとつ伝えてみる
気になる言動があったら、すぐに共有するクセをつけてみる
保護者の話を「聞く時間」として、しっかりと向き合ってみる
こうした小さな積み重ねが、保護者にとっての「信頼できる先生像」につながっていきます。
完璧である必要なんてありません。
むしろ、「悩みながらでも向き合おうとしている先生の姿」にこそ、保護者は安心するのです。
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